腕を求めて

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「もう俺に飽きたの?」 『いや、飽きたっていうか最初から好きじゃなかった』 「なにそれ?誰でもよかったの?」 『誰でもよかったわけじゃないよ』 「じゃあ、なんで急に」 『急じゃないよ』 「俺のこと好きだと思ってくれてるんだと思ってた。ライブも何回も来てくれたし。じゃあ、俺ってなんだったの?」 『腕』 「腕?」 『そう、腕が好きだったの。楽器を叩くその手が好きだった。だからあなたの事も好きになれるかな、って思ったんだけど違った』 「ふざけてるの?俺は本気だったのに」 『ふざけてるわけじゃない。でも最初から好きじゃないし、好きになれなかった。』 「なんだよ、それ」 『楽器を叩く手が好きだと思ってたけど違ったの。誰でもいいわけじゃなかった。楽器を叩く「彼の手」が好きだったし、今も彼が好きなの。』 そう。誰でもいいと思ってた。彼の手に似てる腕を持つあなたなら好きになれると思ってた。 でもごめん。 もう彼が私の手を握らなくても、それでも彼のあの腕がいいの。 だからあなたの手は二度とさわらない。 さようなら。
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