雨の日は君の日

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梅雨が本格的に始まる前は天気は不安定で、今日は夕方から雨が降っていた。 部活を終えて、じめじめとしたこの空気にかったるいなと思いながら俺は重い足取りでバイトへ行った。 雨の日というのもあって、金曜の夜七時を過ぎた頃でもカラオケへ来る客足が少なく、 することのない俺は、受け付けで外を歩く人たちをぼーっと見ていた。 すると、はっとするような真っ赤な傘が眼に入り、そのまま店内に入って来るのは見えたので、俺は気を引き締めた。 入ってきたのは女一人だった。 「いらっしゃいませ」 女はただぺこりと頭を下げた。 下を向いたままなので、顔が見えないが、パンツスーツを来た風貌からするに、社会人といったところか。 「ご利用ですか? こちらにご記入ください」 女が頷いたので、俺はいつも通り受け付けした。 女一人、ヒトカラか。 髪が雨に濡れていて、ポタ、ポタ、と髪から雨が滴り落ち、その様がどうにも寂しさに拍車をかけていた。 仕事の後の憂さ晴らしだろうか、女から感じるのは疲労疲弊という言葉がふさわしい。 ふと女が上目遣いで見上げてきたので、無防備にも目が合ってしまい、ドキッとした。 アンニュイな雰囲気の中にある鋭い眼光。
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