雨の日は君の日

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そうこうしているうちに二時間の十分前になり、 俺がさっきの女に十分前だとコールを入れると、女はわかりましたと言って切った。 外は雨がまだ降っていて、客足が落ち着きまた暇になってしまった。 ほどなくして受け付けにやってきた女は、 相変わらず疲れた顔をしていたが、ここに入ってきた時よりは晴れた顔をしていた。 なんとなくほっとした。 会計処理をしていると、女の視線を頭の先でびしびしと感じた。 なんだろう。 とりあえず会計を済ませ、ありがとうございましたとレシートを渡すが、 女は受け取ったままこちらを見たままだった。 「あの、何か?」 「あ、えっと・・・」 女はぱっと下を向いて視線を泳がせると、小さく「よしっ」と言って俺を見た。 「君、高校生?」 「そう、ですけど」 「そっか・・・」 再び下を向くが、すぐにまた俺を見た。 「いいや、紙とペンある?」 「あ、はい」 女の気迫に押され言われるままに紙とペンを渡すと、女はささっと何かを書いてそれを俺に渡した。 「気が向いたら連絡ちょうだい」 俺は思わず目を丸くした。 「あ、え、あの、彼女、いるんですけど」 そうなのだ。あんなことを想像していたものの、彼女はいるのだ。 想像くらいは勝手だからいいだろうとしていたのだが、まさか、だ。 「あー・・・それでもいいよ。 君がそれでもよければ連絡、ちょうだい。ご飯おごるから」 それだけ言って女は赤い傘さし、足早に再び雨の中へと戻っていった。 「あ、ありがとうございました・・・」 受け取った紙を見ると、 女の携帯の番号とアドレスと名前が書いてあった。 「柿崎、雪」 俺は四つにたたんでポケットに入れた。 アホらしいと思ったことが、別の形で実現してしまった。
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