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「お前な、俺には彼女がいるんだけど」
そういいながらも、俺は丸山から紙を受け取りズボンのポケットにしまった。
別にやましい気持ちがあるわけではなく、
こういうことって人生において貴重な体験なのでその証拠として残しておきたいという気持ちだけだ。
「内緒にしといてやるよ」
「おいおい……」
さっきは真希に言うといっておきながら、内緒にするのかよ。
「彼女いるって言ったのか?」
「言ったけど、それでもいいって。飯おごるって言われた」
「マジかよ! うらやましい!」
ばしっと肩を叩かれた。
「連絡しねーよ」
「なんでだよ、もったいねぇー」
「真希いるし」
「彼女いてもいいって言ったんだろ?
普通に誰かと飯食いたいだけなんじゃねぇーの?
付き合うわけじゃないし、タダ飯食えるなら俺はいいと思うけど」
悪魔のささやきというのはこういうことなんだろう。
目の前の友人が悪魔に見えた。
でも……たしかに付き合うわけじゃないし、タダ飯は魅力的だ。
それに、なんとなく、やっぱり気になった。
なんで俺にこんなの渡したのか?
彼女がきてもいいってどういうつもりなんだろう?
とりあえず、一回会って真意を確かめてもいいと思う。
丸山には内緒だが、学校が終わったら連絡してみることにした。
「おはよー」
間一髪といったところだろう、真希が来た。
「おっす」
何も知らない真希が笑う。
ちょっと罪悪感に駆られた。
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