焼かれる神と鈴の音

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 コンコン様の宮というには素朴に過ぎた。  鳥居すらなく、せいぜい大人の股下程度の高さの祠に過ぎなかった。あたり一面が草ぼうぼうの荒れ放題で見落としそうな祠であった。 「――こんな物は神社とは言えん」  放っておいても消え去りそうな祠だが職責上そういうわけにもいかない。ともかくご神体だけでも回収し、村に建てられた立派な八幡社に合祀せねばならない。その後は人手を集めて祠を解体。祠は燃やして後始末をせねばならないのだ。  青山は祠の戸を掴んで開く。この手の粗末な祠のご神体はせいぜい石ころや古い鏡、稀には獣の毛皮などの場合もあるのだが 「空っぽか」  こういう場合も多い。中身は誰かに盗まれたか、あるいは元々なかったのかも知れない。かの福沢諭吉が悪戯で祠の神体を盗んだのに誰も気付かず拝み続けていたと書いていた話を思い出す。  神体があればこのまま持ち帰りまとめて合祀して手間を省くつもりだったのだが、無いなら 無いで仕方が無い。日が暮れる前に八幡社の神官を連れてきて祝詞をあげさせれば良いだけだ。 「まあ無駄足という事はなかった……景色も良いしな」  青山は祠のそばに大きな平べったい石の上に腰をおろした。どうせまだ昼前だ、煙草の一服でも吸っていこう。マッチを擦り、煙草を詰めたパイプに火を入れようと目線を手元に落とした時、かすかに音が聞こえた。 ――シャン ――シャン
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