オレは進む!

6/16
前へ
/458ページ
次へ
 イータマエが地面に膝を着く。  オレを見上げてくる。 「わしのこと、覚えといてもらえんやろか。わし、結構、役に立つと言われとります。どうか、見知りおき、頼んます」  真剣な眼差しでオレを見た。 「あー、こいつ、無自覚なんだけどな」  ボクーがイータマエに立ち上がるよう、手を差し伸べる。 「誰が何をわかってないのにゃ?」    オーレがワァタクシに訊く。 「つまり、こいつくらい、この人もわかってないってことです」  イータマエに苦笑した。  イータマエがオレに、慈愛の目を向ける。 「教えられんからな。理とは言うものの。厄介なもんやな。そんで、あんたら、これからどうするつもりや?」 「どうするって。わたくしたちは冒険者です。お宝探して、東奔西走するだけです」  「さよか。なんか、お荷物背負っとるみたいやが。わし、あんたらが行こうとしとる街の外れで住み込みの板前しとる。困ったことができたら、いつでも来てええでな」  愛想笑いをし、すっと、顔を引き締める。  ほなら、またな。    カカンッ。  一本足の下駄を鳴らす。  戦利品のヘビ肉ともども。  空高く舞い上がる。  オレは忘れかけていた。  ここは異世界。  リアルではないと。  遠くの街に行く前に。  オレんちに一旦、帰ろう。  ワァタクシが反対したら。  たまには別行動もいい。    エメちゃんはオレと行動をともにする。  彼女はオレ同様、ギルドの一員ではない。    洞窟内で手に入れたものをネットオークションに出している。売れた分だけ入金してくれるサイトにも、サブカル好きな人向けの洞窟品を委託してある。入金していたら助かる。同じ口座振替の電気料金が引き落とせている。  ……いろんな若者が夢見る異世界。  オレはリアルを引きずっている。  夢見る少年少女たち。  マジ、ごめん。 「オレ、一度、家に戻るわ」  「んじゃおれも行くにゃ」 「オーレ、わたくしたちは武器の調整をしに行きます。それからオレサンと合流しましょう。武器のメンテナンスの間、待っていてもらうことに、気が引けていたのです。ちょうど良い申し出です」  「一緒ではダメにゃ?」 「調整をしてみて。新しく違うものを買うか、吟味する時間が欲しいのです」 「それが終わったら」  終わったら。    オーレにワァタクシが微笑む。
/458ページ

最初のコメントを投稿しよう!

162人が本棚に入れています
本棚に追加