162人が本棚に入れています
本棚に追加
ドンっと金袋をオレたちの前に置く。
「大盤振る舞いや。これでどうや」
「もうひと声」
チッ。
渋面をする。
重そうな財布を出す。
ジャラジャラと、コインをワァタクシの手のひらに出していく。空になった財布を、パタパタと振って見せる。
「あかん。持ち金、あらへんようなってもうた。わし特製の調味料を特別に追加するんで、それで手ぇ打ってくれへんやろか」
「ワァタクシ、この金額でいいよ。オレがまたなんか、探すからさ」
「そうですか? オレサンがそう言うのでしたら、わたくしは矛を収めます。でも、このヘビ肉はもっと高く売れますよ」
本当にそうなのか、ワァタクシがイータマエに、吹っかけようと芝居をしているのか。
「重い肉を抱えてちゃ、もっと良いものを見つけたとき、手にできないよ。それ、嫌だろ?」
「そうですね。それは悔しいかも、です」
「もらった調味料を使って、残したヘビ肉でチマキご飯を作ろう」
「保存食を作って、今度はどちらへ?」
「南東にどでかい街がある。地図にあったから見てみたいと、前々から思っていたんだ。この人から受け取った金で、穴路探検に必要なものも買いたいじゃないか」
エメちゃんの服とか。
エメちゃんの髪飾りだとか。
そうそう。
エメちゃんの靴も要る。
オレんちにあった母親のスニーカーを履かせているが、できれば、妖精少女たちが履いていたようなサンダルを掃かせたい。
うちの靴箱にあった母親のサンダルは、人間仕様だ。飛翔したりできない。危険な場面で翔ぶことのできるサンダルが欲しいと、オレは切望していた。金銭的にゆとりができれば、いの一番に買おうと思っていた。
これで買える。
感涙にむせび泣きそうになる。
「ほな、なんですか。あんたら、このオレサンの言う通りの穴路を進んでおると?」
「オレサンはアタリの路しか行かないにゃ」
「ほお。そら、聞き捨てならん話やな」
「コラ、オーレ。余分なことを」
ワァタクシが焦る。
オーレの口をふさごうとする。
「ほうほう。そうやったんか。あんたらはこの御仁の正体をわかって、お仕えしとると」
「何のことでしょう。わたくしたちは偶然仲間となっただけ。仰る意味がわかりかねます」
「すっとぼけるなら、それでも構へん。本モンなら、いずれ聞こえてくる。そやから」
最初のコメントを投稿しよう!