162人が本棚に入れています
本棚に追加
「三人でお二方をお迎えに、オレサンの家へおうかがいしましょう」
「そうだにゃ。家を知ってるにゃ。んじゃ、オレサン。おれたちが行くまで、待ってるにゃ」
武器店とオレんちは方向が違う。
ヘビ肉チマキご飯を作り、分配したところで二手に分かれる。三人組は西寄りの穴路に進む。オレとエメちゃんは、ここからは東寄りの南となる、オレんちに向かう。
オレたち二人のほうが遠い。
当面の食料と豊富な路銀で懐は暖かい。
チマキご飯を三つ携えて、のんびり歩く。
急ぐと、かえって危ない気がする。
そう思うと、あの三人組は用心棒として役に立っていた。二人での道行きは、心許なかった。
穴路から穴路に入っていく。
道案内の看板があるときもあるが。たいていは各々が持っている地図頼りだ。地図に記載されていないときは、勘頼りとなる。
オレは望むように、進んでこられた。
絵地図も、詳細地図も要らなかった。
あの三人組の尊敬を受けられていた。
それはたぶん。
オレんちに洞窟がくっついているせいだ。
だから家主のオレの直感が当たるのだ。
そういうことに、しておこう。
迷子にならずに帰宅できる。
それが一番大切なことだから。
太い穴路から細い穴路へ。
リアルで例えるなら。
国道から田んぼの中のあぜ道へ。
田畑を見ながら穴路に入り、抜け出ると獣人や羽根付きの、いわゆるUMAと分類されてしまう異世界人たちが跋扈する、大通りに出たりする。
穴路を抜けると、景色ががらりと変えることは、珍しくない。しょっちゅうある。
だが、ときおり。
昼夜が逆転している場合もある。
黄昏時なのか、夜明けなのか。
判断しづらいときがある。
時間の区切りは一応ある。
まるで江戸時代のように大まかだが、あることはある。半刻、一刻。相手を待たせても平気。二日間近くは黙って待つ。三日経つと、さすがに怒る。約束事は決裂する。
待たせても二日。
ワァタクシがオレに、異世界のことを教えてくれた。いや、そんなに待たせないし、待ってもせいぜい半日。オレはそこまでだらしなくない。と、胸の裡で頷いていた。
そんなことを思い返しながら。
左の穴路を選んだ。
穴路の途中にオレんちの床下よりは小さい、空洞部があった。老人が壁に寄りかかるように、倒れていた。
最初のコメントを投稿しよう!