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聡美の予想した通り、約束より十分遅れで到着した光輝は、一応待たせた事を詫びはするが、たいしてそう思っていないのがわかる。そしてやっぱり、傘は持っていない。それどころか聡美に対して「ちゃんと傘持ってきてるんだ、偉いね」なんて言う始末だ。 そんな光輝のマイペースさが聡美には羨ましかった。 いや、聡美もかつてはそんなマイペースさを持っていたのだろう。光輝を見ていると、五才も年上なのに、まるで子供を見ているような気持ちになって、自分の中の「奔放な部分」を刺激される。それは聡美の逃げ道でもあった。 光輝は、今の会社に入って三年ほどになるが、その前は海外暮らしをしていて、所帯まで持っていたらしい。けれど、妻に浮気されて離婚。その後帰国して就職。 光輝はよく私情を仕事に持ち込み、それこそ子供を見ているようだったが、感情を抑える事に慣れきっている聡美にとって、光輝の熱い姿は、刺激的だった。 聡美は――、結婚してからと言うもの「理想の妻像」「理想の母親像」を夫や義母から押し付けられ、自分の意見を言う余地を与えられていなかった。 当初は反論する気力も多少はあったものの、子供を設けてからは育児の疲れもあり、言うことを聞く方が楽だと思うようになっていった。     
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