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「実は俺、真奈ちゃんと付き合っててさ、彼女と一緒に行くんだ」 初耳だったが不自然に間が空かないよう、相づちを打つ。 「へぇ。全然知らなかった」 真奈。原田真奈(はらだまな)。新卒で入社して今は四年目だったか。十歳年下の子と。いつの間に。いつから。そんな疑問を続けざまにぶつけたくなるが、ぐっとこらえて、平静を装った。 「聡美さんが辞めた後だったからね、付き合い出したの」 そう言いながら光輝はサラダを取り分ける。自然にこういう事ができる人なんだなと、いつの間にか夫と比較している自分に気がつく。レタス、トマト、ベーコンとバランスよく盛られた皿が目の前に置かれる。 どうやら光輝と真奈は同棲までしているらしく、家事のほとんどを光輝がやっているという話だった。自慢や嫌味の要素はなく、自然にいつもやっていることとして話す光輝に、またしても聡美は食器を洗っただけで恩を着せてくる夫の姿を思い出していた。 ――古坂さんは私の事が好きだと思ってたのに。 思わず口にしそうになった。いや、そのくらいは口にしてもよかったのかもしれない。彼女がいなかったら、もっと、その先を期待していたのだから。 レストランで二時間過ごした後、地上へ出ると、大粒の雨が路面を叩いていた。     
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