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「ひとりだよ。入場料無料だったし、出演者はみんなアマチュア? インディー? って言うのかな? ちょっと夜まで時間潰したくてね。あとパリピにはならんよ、あたしは」
「なんか面白いのいた?」
「う~ん、へなへな歌声の文系バンドとか、コテコテのヴィジュアル系とか、ラップ入った歌ものグループとか、地下アイドルとかばかりだったからなぁ」
「おい!! ヴィジュアル系をバカにするんじゃねぇよ!!! 90年代ヴィジュ系最高だぞ!!!」
「あっ! なんかね、ジャンルはよくわかんなかったけど、個人名のバンドのやつがかっこよかったよ」
「えっ!? バンド名が個人名なの?」
「うん。佐藤海って名前。最後にやった曲がずっと残ってるんだよね。ひとり部屋で泣きじゃくって、スピードをきめ、飛んで行きたいの~あなたはもういないけど、それでもうかまわないぃ~ってさ」
「えっ!? 海さん!?」
「なに? その反応? もしかして恵美! あんたの知り合いなの? ちょっと紹介しなさいよ」
「海さん、まだやっていたんだ……」
そして二人が注文したラテが、遅れてやって来る。
この日に恵美は、家に帰ってから佐藤海に連絡をした。
終
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