Track.5

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あたしが内心そう思っていると、隣の席にいた黒スーツ姿の若い女性三人の話し声が聞こえてきた。 「出張だから大変だね」 「たまにはいいわ。仕事帰りに乙女ロードいけるし」 「直帰なんだろ?」 「じゃなきゃ引き受けませんよ」 ……今気づいたけど。 黒スーツ……もしかしてミッシェル・ガン・エレファントのファンか? あたしがそう思っている中、彼女たちは続ける。 「さっきのオシャレなグループの中に、おとなしそうなのが一人いたでしょう?」 「あっ? それがどうしたんだよ?」 無表情の女が話すと、目つきの悪い女がどうでもよさそうでいて不機嫌そうに聞いていた。 「あれを総受けにして……」 「あたしも同じ事を考えてた!!! ふぅ~!!!」 「お前もかよ……」 「ですです!!!」 「ったく、カフェで腐ってんじゃねぇ」 「またまた~そんな事言って!!! 好きなくせにぃ~。いいじゃないですか、腐っても!!!」 「腐っても鯛……」 無表情の女、無駄にはしゃぐ女、目つきの悪い女がなにやらよくわからない話をしている。 そして三人は、お茶を飲み終わるとすぐにいなくなった。 何を話していたんだろう? 総受け? 腐る? 単語の意味がよくわからん。 あたしは流行に(うと)いからな。 今度会った時に千春ちゃんに訊いてみよう。     
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