Track.5

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「えぇ~。でも簡単なものしか作れないよ、あたし」 「いいから頼むわ」 彼女は料理が得意ではないと言ったが、クリームチーズの明太子マヨ、鶏ササミのピザ、揚げないフライドポテト、トマトのチーズ乗せサラダ、アボガドチーズベーコンなどの、謎料理を手早く作った。 これがまた美味しかったんだ。 ……アイちゃん凄いな。 得意じゃないのにこのレベル。 それに比べてあたしは……。 いや、あたしは得意とか苦手のレベルまでいってない。 つまり……できないのだ。 曲や歌詞ならすぐ作れますが、そんな女を男は欲しがりません……うぅ。 あたしはジャックダニエルをコーラで割って内心ひとりでベソをかいていた。 「チバさん超カッコよかった!!! あたしもギターやろうかな?」 「おぉ!! いいね。グレッチ買えよ。グレッチ」 グレッチを弾く女の子……。 あたしの理想……PJハーヴェイ。 「でも、買ってすぐ挫折したらもったいないじゃん。だから悩むよね」 「大丈夫だよ。ここにいる『音楽と寝る女』が先生なって教えてくれるさ」 あたしがアルコールで朦朧としていると二人が勝手に話を進めていた。 勘弁してくれ……。     
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