Track.6

1/5
前へ
/166ページ
次へ

Track.6

「明日早いからもう寝るわ」 堀木は車の運転で疲れていたのか、浴室に向かって行った。 おそらく風呂に入ってから眠るのだろう。 あたしはアイちゃんの作ったトマトのチーズ乗せサラダを一口食べると、ジャックダニエルのコーラ割を飲み続けた。 「そういえばユカとは連絡とっているの?」 「いや、2~3年前に一度日本に来たけど。元カレに会うとかで会えなかったよ」 ユカとはあたしの元恋人。 黒崎結花の事だ。 彼女とは、彼女がやっていた個人経営の雑貨屋で、あたしがお客として行っていて知り合ったんだ。 若い女一人でよく店を持つ事ができたね、と思って訊いてみたら、どうやら父親が不動産会社の会長で、そのコネがあるみたい。 でも、ユカは父親の事が嫌いで詳しく話してはくれなかった。 話を戻すと、あれは何度かお店に出入りしている時に――。 「あんたさ。いつも輸入物のブート買っていくよね?」 「はぁ……」 「しかもギャング・オブ・フォーとかキリング・ジョークみたいな、英国ポストパンクばっか。女の子なのにめずらしい」 「好きなんですよ、昔から……」 「奇遇ね。あたしもだよ。あたしの名前はユカって言うの。仲良くなれそうね」     
/166ページ

最初のコメントを投稿しよう!

54人が本棚に入れています
本棚に追加