灯火

9/15
前へ
/62ページ
次へ
***** 車は高速を下りて山道に入った。 「わー、 大自然」 夏の終わりの山は緑がいっぱいで、 ここで暮らしたら凄く健康になりそうだ。 窓を開けて空気を吸い込んでいると彼に笑われた。 「目的地もうすぐだから」 さらに進んで標高の高い場所に来ると、 急に目の前が開けて光るものが見えた。 車を停めた瞬間、 ドアを開けて走り出る。 「おい、 転ぶなよ」 「綺麗…」 「これを見せたいと思って」 眼下には山に囲まれた小さな湖が見えた。 峠から見下ろすそれは青い宝石のようだ。 「一度来てるはずだけど、 覚えてないよな」 「え、 そうなの?」 「漣が結婚してすぐだったか、 皆で来た」 すると、 彩香が産まれて間もないあたりだろうか。 それなら記憶になくて当然だ。
/62ページ

最初のコメントを投稿しよう!

8人が本棚に入れています
本棚に追加