灯火

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彼女はいつもの如く、 俺の仕事中にやってきた。 「麗奈のグランプリはカナダからか。 十月だな」 秋に開始するグランプリシリーズで日本を含む六カ国のうち麗奈が出場するのは日本とカナダ。 「期待されてるんだな。 頑張れよ」 地元の大会に選ばれるのは開催国枠じゃなければエース級の人材である事が多い。 それでなくても麗奈はファンが多いので入場者を当て込んでのアサインであろうと思われる。 「見に来てくれる?」 「ん?取材のパスがもらえたら行くよ」 「うん…」 彼女はどこか上の空で、 大会よりも他の事を考えているようだ。 「ヒロト君」 「ん?」 「二人で、 どこか行きたい。 夏休み終わっちゃうし…」 「外にか?そうだなあ」 中学生くらいまでは練習の息抜きにしょっちゅう一緒に出かけていた。
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