灯火

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「ねえ、 お弁当作ってきた」 「ええっ?」 お嬢様育ちの麗奈は文字通りフォークより重い物を持った事がない筈だ。 これは覚悟しておいた方がいいかもしれない。 俺は弁当に一抹の不安を抱く。 だが、 麗奈を乗せて車を走らせるのは楽しい。 高揚感を悟られたくなくて殊更無表情を装う。 「どうした」 隣から見つめてくる視線を感じ、 前を向いたまま尋ねた。 「ヒロト君の真剣な顔、 好きだなーと思って」 「何だそれは」 苦笑いするしかない。 「変な事言われて事故ったら困るから、 前見てろ」 「えー」 昔から何度も一緒に出かけて、 助手席に乗せるのは初めてではないのに動悸が高まるのを意識する。 麗奈の立ち位置が『友人の娘』から、 『恋人』にはっきりと変わっていた。
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