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「伊弉冉尊は問われた。
“狐よ。吾をどう見る?” と。
儂が心のままに “哀” と答えると
“拭えぬ穢れよ。何故ならば、吾は心を棄てきれぬ” と申された」
もう明け方でさ、外では 鳥も鳴く時間だし
普段より余計にわかんねぇ。
心を棄てれば、穢れじゃない のか?
自分で自分の心を棄てたら、それは誰なんだ?
あれ... ?
こういうの、昔やった気がする。
考えて考えて、考えて また考えて
急に閃きみたいのが...
「じゃあ、棄てなくていーんじゃねーのー?」
ルカが コーヒー持って戻ってくると
掴みかけた何かが霧散した。
「伊弉冉尊さんてさぁ、別に悪くないもんなー。
出産で亡くなったんだろ?
でも生きてるヤツにとっては、死が穢れになっちまうんだよな。
伊弉冉尊さんの穢れってさぁ
単独では “無” んじゃね?
誰かにとっての穢れ なんだろ」
ルカは両手に持ったコーヒー 4つをテーブルに置く。
何かに対して...
誰かや何かと、関わりを持っていなければ
それは穢れでは なくなるのか?
もし、妻神や母神としての心... 念を棄てれば
穢れではなく、単に冥府の神になる... ?
少なくとも、本人の内では
胸を何かで燻らせたまま、コーヒーに手を伸ばした。
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