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******** 車を降りて来たのは、悪魔に憑かれたという まだ高校生くらいの男と、その母親。 医者 一人、看護士 一人。 憑かれた男は、本人や他人に危害が及ばないように... という配慮のためなのか 上は 白い拘束衣を着せられている。 「それでは、彼をこちらへ お願いします」 教会の磔の十字架の下で ストラという長いストールのようなものを 両肩に掛けたジェイドが言う。 床には、白い布が敷かれていた。 憑かれた男は、無精髭を生やし まだ未成年とは思えない程、皮膚の艶を失い 白濁した眼でジェイドを睨みつけている。 十字架の下の白い布の上に座らせると、男が唸り出したので 医者や看護士に脇にいてもらうようにし ルカが男の肩を後ろから押さえ、オレが脚を押さえた。 「お母様は、少し離れて見守られて下さい」 小さく細い母親は、疲れ切っており 今にも倒れそうに見える。 ジェイドの言葉に頷き、通路の長椅子の隣に立った。 「マルコ」 ジェイドに呼ばれ、マルコシアスが憑かれた男を覗く。 マルコって...  略称か? まあ、この場で悪魔の名前言えないよな。 聖人にもマルコって居た気がするけど。 男は、マルコシアスに白濁した眼を向けると 口を歪めて笑った。 マルコシアスが顔色を変え、ジェイドの耳に 何かを呟く。 「... これはこれは、マルコシアス侯爵。 教会などで何をしている?」 男は嗄れた声で、マルコシアスに言う。 「マルコ、君は裏にいてくれ。 彼が興奮すると困る」 ジェイドの言葉に、マルコシアスは無言で頷き、 教会を裏口から出た。
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