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******** 塚の巨石は、月明かりの下に 静かに佇んでいる。 オレらは、榊と浅黄の背後にいたが その後ろには、集落の人たちもついて来たので ジェイドが オレらの背後に、また守護精霊を置く。 慶空が岩の前に立ち、半眼となり 不動明王咒を唱える。 「ナウマク サラバダタ ギャーテイビヤク サラバ ボッケイビヤク サラバタラタ センダマカロ シャダ ケン ギャキ ギャキ サンバビギナン カン タラタ カンマン... 」 幾度か繰り返すと、深く息を吸って眼を開き 薙刀の柄で巨石を ガッと 一突きした。 薙刀を片手に持ち直し、柄で地面を突くと ビキ と、硬いものに(ひび)が入る音がする。 また地面を突くと、巨石がガラガラと崩れた。 罅は巨石の中心から放射状に拡がったようで 地面に接している崩れ残った部分も、幾つかに割れている。 巨石の向こうの沼が ボコボコと音を立て 沼の上に、黒い靄が濃密に凝る。 靄に誘われるように 沼のぬかるみが ぞろぞろと這い上がり 靄に纏わり付いていく。 靄に纏わり付いた ぬかるみは 泥の人となった。 まだ みるみると、姿形までが造られていく。
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