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塚の巨石は、月明かりの下に 静かに佇んでいる。
オレらは、榊と浅黄の背後にいたが
その後ろには、集落の人たちもついて来たので
ジェイドが オレらの背後に、また守護精霊を置く。
慶空が岩の前に立ち、半眼となり
不動明王咒を唱える。
「ナウマク サラバダタ ギャーテイビヤク サラバ ボッケイビヤク サラバタラタ センダマカロ シャダ ケン ギャキ ギャキ サンバビギナン カン タラタ カンマン... 」
幾度か繰り返すと、深く息を吸って眼を開き
薙刀の柄で巨石を ガッと 一突きした。
薙刀を片手に持ち直し、柄で地面を突くと
ビキ と、硬いものに罅が入る音がする。
また地面を突くと、巨石がガラガラと崩れた。
罅は巨石の中心から放射状に拡がったようで
地面に接している崩れ残った部分も、幾つかに割れている。
巨石の向こうの沼が ボコボコと音を立て
沼の上に、黒い靄が濃密に凝る。
靄に誘われるように
沼のぬかるみが ぞろぞろと這い上がり
靄に纏わり付いていく。
靄に纏わり付いた ぬかるみは
泥の人となった。
まだ みるみると、姿形までが造られていく。
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