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僧侶だ。
六部の巡礼者は、六部笠を被り
白衣に手甲、脚絆、背中には仏像を入れた厨子を背負っていたらしいが
黒い靄と ぬかるみが造ったものは
法衣に肩袈裟、網代笠を被り、錫杖を持っている。
六十六部の巡礼は、一般の人も行ったが
こいつは生前、宗教者だったようだ。
「臨 兵 闘 者 皆... 」
慶空が九字切りする間に、それが眼を開く。
「オン キリキリ オン キリキリ... 」
不動金縛りを掛けようと、慶空が手に印を結び変えている時に
泥の僧侶が前へ出て、割れた巨石に乗った。
手の錫杖を振り上げた時、浅黄が 僧侶と慶空の間に跳び入り、薙刀の柄で錫杖を受ける。
「ナウマク サマンダ バサラダン センダ マカロ シャダ ソワタヤ ウン タラタ カンマン... 」
僧侶が錫杖を真横に振ると、浅黄は高く跳んで避けた。
「オン キリキリ... 」
不動金縛りが完成しようとした時だった。
「これが、六十六部の巡礼者なのですね!」
場違いな程 明るい声がした。
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