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引き金を引いてみる。 まぬけに飛び出したフランス国旗に 少し笑ってると、着替えたジェイドがリビングに入ってきて 向かいに座った。 ピストルに眼を止め、ジェイドも ちょっと笑う。 「やっと寒さが和らいで来たね。 そろそろ桜の時期だ」 アッシュブロンドの髪に、薄い色のブラウンの眼。 高い鼻に桜色の唇。麗人 てやつだな。 ジェイドは、イタリアとアメリカのハーフだが うまく混ざったもんだと思う。 ルカが オレの鼻を見て、よく “ツンてしてるよな” とか言うが 鼻の先が丸みを帯びているオレには ジェイドの高く整った鼻は羨ましい限りだ。 ルカがコーヒーを 二つ出し、またキッチンに戻る。 エスプレッソだと 二杯ずつしか淹れられないので、サイフォンも置いているようだが 今日はエスプレッソにしたらしい。 「桜かぁ。もう そろそろだよな。 花見しねぇとな」 カップに半分ほどのエスプレッソを口に運びながら 「泰河、そのピストルだけど」と 腕を伸ばしてきたジェイドの手首の上に 眼を止めた。 薄手の黒のシャツの袖の下 白い肌に、なんか描いてある。 ピストルに手を置いたジェイドの手首を ハシッと掴み、袖を捲ってみると 現れたのは、骨の骨格に巻き付く蛇の体。 全部 黒一色で彫られている。 「ああ、これね。日本語で何て言ったっけ? 若気の至り、だったかな? そのひとつだね」 ジェイドは いつもの穏やかな顔で笑うが まったく、不良神父だよな。
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