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それから彼女は、毎晩 店の奥に立った。
がぼがぼと、水音をさせて
自分も 床も濡らして。
でも ここに出る限り、朔也は無事だわ。
売り上げの伝票をチェックしながら
急に 指が震えた。
こわい
今まで、平気だったのが 不思議
今は とても、彼女がこわい
早く、お店を出よう。
キッチンから、裏の鍵を閉めて
カウンターの下からバッグを掴むと
ギクリとする。
彼女は、お店の真ん中にいた。
動けるんだわ...
また少し 彼女が近づく
がぼがぼと 言葉にならない水音を立てながら
どうしよう? どうしよう
凍った月と はぜた火の熱
私 生きたい
赤茶けた髪 見開いている充血した目
彼女が 水を吐きながら笑った
やめて 来ないで
お願い
生きたいの...
また 彼女が近づくのに 動けない。
ドアは そこにあるのに
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