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突然、そのドアベルが鳴る。 「よう、沙耶ちゃーん」 「腹 減ったんだ、オレら」 バッグを抱き締めて、震える私を見て 朋樹くんが、自分の背中の後ろに私を回した。 「なんだ こいつ?」 「何かいるのか? オレは見えん」 やめて、あぶないわ まだ声が出ない。 朋樹くんが、泰河くんの肩に手を置いて 呪文みたいなものを唱えると、泰河くんは 「うわっ、水 吐いてやがるぜ。気持ち悪ぃ」って 急に みえるようになったみたいだった。 「高天の原に 神留まります 皇が睦 神漏岐、神漏美の命以ちて 八百万の神等を 神集へに集へに給ひ... ダメか。強いぜ こいつ。 泰河、掴めるか試してみろよ」 「おまえ、マジかよ?」 「... ダメっ!」 なんとか言った私を、朋樹くんが手で止める。 泰河くんは おもむろに歩き出して がぼがぼと水を吐く、彼女の額を掴んだ。 「おっ、イケるぜ」 「よし、掴んどけよ」 朋樹くんは、私に「これ持って」って 小さな四角い木を持たせて 何故か、花が付いた桜の枝を持ったまま 泰河くんと彼女に近付いて行く。
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