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「... へえ。元は生き霊だったんだな。 呪詛 使ったか。川に人形厭魅(ひとがたえんみ)。 失敗してるな。呪殺 出来てない。 てことは、人形 回収しないでイケる。助かるぜ。 調伏くらって、返りが起こったか。 よし、泰河。水 吐かせてみろ」 泰河くんは、一度 眉をしかめて 朋樹くんを睨み 彼女のお腹を蹴った。... 何してるの? 「ダメだ。吐かねぇ」 「後ろから!」 朋樹くんに言われて、泰河くんは彼女の後ろに回り、お腹の辺りに両手を回し、グッと力を入れて お腹を圧迫する。 「イチャつきに見えんこともない」 「うるせぇ。早くなんとかしろ」 「吐けよ。なんか取り込んでやがる。 混ざったな。泰河、陀羅尼」 「ノウボバギャバテイ・タレイロキャ・ハラチビシシュダヤ・ボウダヤ・バギャバテイ・タニャタ・オン・ビシュダヤ・ビシュダヤ・サマサマサンマンタ・ババシャソハランダギャチギャガナウ・ソハバンバ・ビシュデイ... 」 泰河くんが 呪文みたいなことを言う間に 朋樹くんは「使いたくなかったぜ。 せっかく公園から折ってきたのによ」と 手に持った桜の枝に、もう片方の 人差し指と中指を立ててつけた。 ふう と、枝に息を吹く。 枝から無数に、青白く見える花びらが 彼女の口の中に、矢のように追突していく。 朋樹くんが 息を吹きやめると 彼女は動きを止め、泰河くんにお腹を圧迫されて 水と花びらを吐いた。 ヒッ と、自分の喉が鳴る。 彼女の口の中から、黒く小さな手が伸びた。
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