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「今日は、母の命日なの」
病院に行く時にみた、桜を思い出す。
ボティスさんは、頬杖をついたままの姿勢で
私から 赤い眼を逸らした。
手の中の鍵は、陽真さんの鍵だわ。
沢... 連れて行かれたのね...
「人を呪ったな。魂は沢の淵に繋がれていた。
お前が待たんよう、死にながら歩き
身体だけは何とか戻したようだ。
繋がれた魂は、契約して解放したが
この珈琲代として、契約は破棄する」
長い牙の口で、カップの珈琲を飲み干すと
彼は隣から消えた。
『... 沙耶 』
懐かしい声
隣に、陽真さんが座ってる。
『 会いたかった 』
頷くことも出来ない
会いたかった 私も あなたに ずっと
『 いかないと いけないんだ 』
胸が ちぎれそう
陽真さん
『 沙耶が生きていて 嬉しい 』
燐光が 陽真さんを包む
『 あいしてるよ 』
懐かしい匂い
彼は、私に くちづけると
空気に融けるように 消えた。
また、誰かを あいして
そう 言葉を残して
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