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「琉地みたいなものなのかな?」
ジェイドが言うと、榊の隣に白い煙が凝った。
琉地だ。
「のっ!!」
榊の黒髪の毛先が ざわっと逆立ち始め
二つ尾が帯の下に出た。
立ち上がり「これはっ!!」と焦っている。
そうだ... 琉地はコヨーテの精霊で
見た目は狼に近い。狐は 犬や狼を怖がる。
「落ち着け、榊!」
「大丈夫! こいつは犬でも狼でもない!」
オレと朋樹が宥めるが
ルカも、榊が狐ということを思い出し
「琉地。ここ、お座敷だからさぁ
ちょっと庭で遊んで来いよ」と、撫でて
琉地を外へ出るよう促している。
琉地は榊の匂いを嗅ぎたそうだったが
庭の鹿威しに興味を持ったようで、狐のような尾を上げて居間を出た。
「むう... 狼犬ではないか... 」
榊は まだ警戒している顔で座り
「あのような者を隠しておったとは」と
二つ尾でパタパタと畳を打った。
「ごめんな、榊さん。
紹介しとけば良かったよな。
オレの相棒なんだ。怖かった?」と聞くルカに
「何を。怖いことなどあるものか」と強がり
「きっと僕のことみたいに、すぐに慣れるよ」と
ジェイドに言われ、ふん と 横を向く。
「意外と かわいい人だ」
ジェイドが付け加えると
「むっ。 儂は齡三百であり、小童などに そのような... 」と、ふんふん鼻息を荒くしているが
おじさんが戻って来た。
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