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おじさんは、テーブルの上に 無言で 古く細長い木箱を置き 朋樹が手を伸ばすと、木箱を自分の方に引き寄せた。 「じゃあ 置くなよ... 」 小声で聞こえるように 朋樹がぼやくが おじさんは無視して、厳かに口を開いた。 「これは、うちに代々に伝わる物だ」 「いつから?」 「知らん。うちの神社の歴史を考えれば 800年か 900年程前だ」 結構アバウトだな... 12世紀頃か。 「わっ、すげぇ! 平安時代とかじゃね? 檀ノ浦の戦いとかって、1185年だよな?」 おじさんは ルカに頷き 「鎌倉時代に入った頃だ」と 木箱を開けた。 中にあるのは、木箱より古びた巻物で おじさんが、そっと取り出して 静かにテーブルに広げた。 ... けど、達筆すぎて読めん。 開いた巻物にはミミズ文字が縦に並ぶ。 読めても意味 解らなそうだな。 オレ、古文とかダメだし。 かろうじて読めたのは、最初の “文治三年” だけ。 文治ってのは、日本の元号のひとつらしい。 習ったのかもしれんが、そんな覚えすらないぜ。 「1187年か... 」 朋樹が言うけど、ジェイドは当然として オレもルカも「へー、すげぇ」 「古いんだな」くらいのことしか言えねぇし。 「玄翁(げんおう)は 生まれておるのう」 あっ、そうか。玄翁は 千年 生きてるんだよな。 なんか その方がすごい気がする。 「ここにあるのは、白い神獣の記録だ」 「えっ、いきなり核心じゃん! おじさん、もっと勿体ぶるかと思ってたぜー」 おじさんが ルカを睨む前で 朋樹と榊が、巻物の文字を眼で追う。 「... 朋樹の祖先は、見ておるようじゃな」 「... でも、待てよ。“身の血 ふつせり”?」 中途半端に開いていた巻物の先を開こうと 朋樹が 指を伸ばすと、おじさんが巻き戻し出した。 「まだ続き あるんだろ?」 朋樹を無視して、おじさんは 巻物を木箱に戻しちまってる。
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