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心臓バクバク鳴らせながら車を降りると 女の白いふくらはぎが二本、車の下から覗いている。 汗が噴き出し、耳鳴りが始まった。 「なあ、これ... 」 掠れた声でルカが言う。 「さっきまで、透けてたよな?」 今、白いふくらはぎは 実在感を伴って、じわじわと広がる血だまりの上に、力無く転がっている。 「なんか... 」 やばいよな... オレもルカも、車の下を覗き込もうと しゃがみ込むと 車の下からシャカシャカと 平泳ぎするかのように四肢を動かして、女が這い出して来る。 『イィイィィィーーーッ!!』 金属が()れるような奇声付きだ。 くそっ! やばいとか思って損したぜ! 血走った両眼を見開いた女は 『アアアアアーーーーッ!!』と オレの車に手形の跡を付けながら這い上がり カエルっぽくルーフに張り付いた。 何がしてぇんだよ... 女はゲラゲラと笑い、車をガタガタ揺らしている。 「ファンキーじゃねーかよ! こいつ、完璧に からかってやがんな! なんか腹立つぜ! 琉地(ルチ)!」 ルカがコヨーテの精霊を呼ぶと、白い煙が女の口に入っていき、女の笑いと動きが止まった。 「よし。一応、正気に戻そうかな」 ルカが ジーパンから出した筆で、女の額に文字を書いている。 ルカはシェムハザに、天の道具だという 化粧筆をもらった。 シェムハザとアリエルの結婚式を終え 日本に戻り、仕事を再開してから ルカは憑かれた人や 霊にも、筆でなぞるべき模様や文字が見えるようになった。 筆で引き出した念を、オレが浄化する。 この流れを、朋樹やジェイドは 違う方法で 一人でやってる訳だが... そこは、まぁいい。 オレの浄化方法は、右手で額に触れるだけ。 陀羅尼もなし。心経もなし。 掴めるヤツじゃなくても、手軽に対応 出来るようになったぜ。
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