739人が本棚に入れています
本棚に追加
/224ページ
「社を血で穢したな。罪は重い」
狐火が乱舞し始めると、ルカが小声で風を呼び
怯え出した集落の人々の顔に突風を当てる。
恐れ戦いた人々は、次々に座り込み
頭を下げた。
注目されなくなったシェムハザは
「顔を上げよ」と命じた。
風が止むと、狐火は また緩やかに揺れる。
「お前たちは何故、禁を破り
各々の家を出た?
夜明けまで、先祖の罪のために祈れ と言ったはずだ」
それは昔、六部を封じた法師なり何なりが言ったことであって
香香背男... シェムハザが言ったんじゃないとは思うが、皆
「申し訳ありません... 」
「どうか、お怒りを鎮めて... 」と
自然に受け入れている。
「顔を上げろ!」
いや 日本では、謝る時って
これが普通なんだよ。
「タタリが祓われるか どうかは
お前たちの心次第だ。
罪を悔い改めよ。清浄なる心を持て。
光とは、内にあるものなのだ。
俺は、お前たちと共にある」
タタリのイントネーションが微妙な割りに
皆、有り難がって聞いている。
「この姿では長くは ここに居られんが
俺は、俺の従者に降りる。
この従者を俺と思って従え。良いな?」
シェムハザが、ジェイドの肩に手を置いて言うと
皆すんなり納得した。
もしこれが、ジェイドじゃなくオレだったら
皆、怪訝な顔になったことだろう。
「まずは各々の家に戻って祈れ。
時に人には試練が与えられるが、乗り越えられんのなら、まだ何かしら足りん ということだ。
今タタリを断ちたければ、乗り越えて見せよ」
俺は助けん みたいなことを言って
ジェイドの影に溶け込むように見せかけて
シェムハザが消え、狐火も消えたが
人々は感動に打ち震えている。
最初のコメントを投稿しよう!