2/5
737人が本棚に入れています
本棚に追加
/224ページ
沙耶ちゃんは、27のオレらより おそらく少し年上なのだが、正確な歳はわからない。 華奢で小さいので、こうしてオレらが 店のカウンターに座っていると カウンター内にいる沙耶ちゃんは オレらの影になり、外からは見えないだろうと思う。 二重瞼の大きめの眼、長いまつげ。 ナチュラルな色の口紅がよく似合う。 一言で言えば、可憐な感じだ。 「朋樹くんはまだ実家なの?」 「うん、もうそろそろ連絡あると思うけどさ」 朋樹は、日本に戻ってから すぐに自分の実家へ向かった。 朋樹の実家は 神社だ。 男ばかりの 三人兄弟の次男。 神社は長兄が継ぐことになっているので 朋樹は、オレとフラフラと祓い屋をやっている。 “実家で獣の話を聞く” とか言って帰ったけど、連絡は まだない。 この獣というのは、オレらが 10歳の時に 山で会った らしいけど、オレには そんな覚えはなかった。 思い出そうとしてもサッパリだ。 オオクワガタを捕りに行く、と オレが聞かなかったようだが、そんなことは ガキの頃しょっちゅうやっていたので、それが どの時のことかは わからない。 でも、ルカがオレの右眼の周りや右腕を 天の筆でなぞると、白い炎のような模様が浮かび それからオレは 右眼でのみ霊が見えるようになって、右手で浄化が出来るようになった。 その白い炎の模様は、獣のたてがみや尾、蹄の上に巻いていたものに似ているらしい。 なら やっぱり、オレは その獣に会ったことがあるんだろうか?
/224ページ

最初のコメントを投稿しよう!