1/7
737人が本棚に入れています
本棚に追加
/224ページ

「... よし。いいぜ、泰河(タイガ)」 ルカが客の前から退()くと、閉じた両瞼に 白い点が描かれた客の額を右手で掴む。 中にいる霊の感触を 手のひらに感じると 指の間から光が発されるのが見え 客に憑依している霊は浄化される。 「どうですか? 気分は」 額から手を外して聞くと、客が 白い点の模様がなくなった瞼を開き 「あ... はい... 」と 涙で眼を潤ませ 「とても、楽になりました」と、息をついた。 交通費込みの料金を受け取ると 「また何かありましたら... 」と 挨拶して 名刺を渡して車に戻る。 沙耶ちゃんに、電話で仕事終了の報告を入れ ルカが助手席に乗り込むと 車を出した。 「今のってさぁ、5分かからなかったよなぁ。 次どこー?」 「ビルの地下駐車場だな。 隅の駐車スペースに、何度も女が出るらしい」 「ふうん。ありがちな感じのヤツだな」 「そうだな。まあ、またすぐ終わるだろ」 フランスのシェムハザの城で、出来ることが増えたオレとルカは、調子に乗っていた。 今まで霊が見えなかったオレは、右眼でのみ 見えるようになり 今の客のような憑依の場合、憑いた霊が客の奥に引っ込んでいる場合でも ルカが霊に印を付けると、霊を捉え 右手を置くだけで浄化することが出来る。 「すげぇ楽だよなー」 「だよなぁ。オレ、今まで霊には 朋樹がいねぇと何も出来なかったけどさ」 オレらは、沙耶ちゃんから 本来なら朋樹に依頼されるはずの仕事も どんどん回してもらっていた。
/224ページ

最初のコメントを投稿しよう!