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集落の方々から 叫び声や呻き声がする中 透樹くんが、おじさんと朋樹を見上げ 「あれが出たんだろう? 何があったんだ?」と 聞く。 「... 式鬼で燃やした」 朋樹が乾いた声で答えると、透樹くんが立ち上がり、朋樹の胸ぐらを掴んだ。 「陰陽の術か? あれを祓えば、集落の人に異変が起こる と聞いてただろ?!」 「透樹、やめろ」 おじさんが 透樹くんの腕を掴んで下ろさせた。 「朋は 川本を救おうとしただけだ。 俺が大祓で祓えていたとしても、結果は同じだ」 でも、目の前で 人が痛みに苦しんでいる。 朋樹が しゃがみ、肩口を押さえている その人の手に、自分の手を重ねた。 「痛みを取り除くには、あの異形の者の念を鎮め、 また塚に封じるしかない」 それまで、集落の人たちは ずっと 痛みを耐えるのか? 「夜が明ければ、一度 痛みは引くだろう。 異変は、明るい間は治まるそうだ。 夜明けまでは 多少でも痛みを軽減するために 祓詞で念を薄めるしかない。 泰河、俺の車に御神酒がある。持って来てくれ」
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