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“法華経が聞こえるまで、どこぞに待機しておれ” とか言われて、オレらは また川本さんの家に お邪魔している。 おじさんと透樹くんは、ミキさん家。 榊たちは外にいるので、川本のおっさんは 座敷に座ったまま、煙草に火を点けた。 「昼間、ミキちゃんの家に行ったけどなぁ 塚の縄のことは、ミキちゃんは “知らん” と 嘘をついた」 嘘かよ。 「あの子は 嘘つく時に、顎が少し 前に出るからなぁ。 何を考えて、塚に縄を掛け替えたのかは わからんが... 」 おばさんが出してくれた ふきのとうのオイル煮や、つくしと水菜の炒めものをつまみながら 「異形が出れば、香香背男が降りると思ったんじゃねぇの?」と言ってみると 「まったく、困ったもんだ... 」と ため息と 一緒に 煙草の煙を吐き出した。 「それならだ。せっかく香香背男が降りたのに こう、大人しくしてるのも おかしなもんだな」 おっさんは眉間にシワを寄せて言うが、ルカが 「もう、目的が達成されたから 満足したんじゃね?」と、軽く言う。 「なら いいけどなぁ... 」 「しかしだ」と、おっさんは 返りの痛みが出だして、氷嚢で肩や脚の付け根を冷やしている朋樹に 「雨宮は、どうする気だ? あれを封じられるのか?」と聞くので 「榊たちと何か話してたぜ。 オレらには “邪魔するな” ってよ」と答えると 「狐の嬢ちゃんか。俺も見学するか」と 煙草を灰皿に揉み消し 「母ちゃん」と、おばさんに 空気のグラスを持つような手の形を作り その手を口元で煽って見せた。 “酒” ってことらしく、おばさんが座敷を立つ。 これ、うちの父ちゃんも やるけど “酒くれ” まで言えばいいのにな。 「けど、なんかさぁ “集落の道には出るな” って 言ってたぜ」 ルカが言うと、おっさんは 「出れんだろう。香香背男の兄ちゃんが 天から精を呼んどる」と、普通に言う。 「それも わかるんですか?」と ジェイドが聞くと 「そりゃ、庭先に置かれたらなぁ」と おっさんは、また煙草を取り出して咥えた。
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