25

1/5
737人が本棚に入れています
本棚に追加
/224ページ

25

ゴッ と、薙刀の柄が異形の脇腹に当たり 異形の足が止まる。 浅黄は、薙刀を また振り、異形の 二の腕を打った。 次に薙刀を背に回して 両手で柄を持つと くるりと立ち回り、また脇腹を打つ。 たまらず よろけたところを足払いし 地に転びかけた異形の胸を、柄で突いて飛ばす。 「おお、これは無惨じゃのう」 榊が、法華経が遠退いた時に 大声で言った。 異形が立ち上がると、浅黄が また無表情に 薙刀で打つ。 「所詮は人に非ず。 継ぎ接ぎの木偶人形であろう」 薙刀が空を切る音と、異形の身を打つ鈍い音。 浅黄に打たれる度に 異形は後退させられている。 「どうじゃ、皆 憎き異形が成敗される様を、見学しては?」 幻惑を加えたのか、榊の声が 法華経の響きを上回り、集落中に響いた。 榊は、紅い くちびるを緩く開き いくつも狐火を出し 道の脇に、赤オレンジの拳大の珠が ゆらゆらと揺れる。
/224ページ

最初のコメントを投稿しよう!