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「ミキちゃん!」 川本の おっさんが叫ぶ。 ミキさんは蔓に引き戻されが、胸を押さえて咳込むと、カッと眼を見開いた。 「きゃああっ!」 白衣の胸元を両手で握っている。 「いたい いたい 痛ぁいぃっ!!」 朋樹が呪を解き、蔓が地に沈むと ミキさんは その場に座り込んだ。 おじさんと透樹くんがミキさんの側に しゃがみ 様子をみている。 ミキさんは、白衣(はくえ)の胸元をかばうように 背を丸くして「痛い 痛い」と 泣き声を出した。 透樹くんが、ミキさんの隣にしゃがみ 自分に凭れかからせるようにして 片手を取って、白衣の襟を肩側に引いた。 「... 返りだ」 白衣の下のキャミソールから、赤いみみず腫の線が覗いている。 肩口から始まる その線は、斜めに胸を通り 脇腹まで達しているようだ。 袈裟懸けに切られた跡のように見える。 この僧侶が斬られた跡か...
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