1/5
737人が本棚に入れています
本棚に追加
/224ページ

白衣と紋付き袴に着替えたおじさんが 裏の拝殿に 一礼して入り、オレらも後に続く。 この拝殿は、6畳くらいの広さで板の間。 ガランとして何もない。 前の方にある小さな台に、おじさんが灯火を置き 「朋、扉を閉めろ」と 最後に拝殿に入った朋樹に言う。 扉が閉まると、窓もない拝殿は昼間でも暗い。 頼りない灯火の灯りで、ぼんやりと 壁の位置がわかるかどうか ってくらいだ。 「泰河、座れ」 おじさんに言われて、いつも そうするように 灯火の前に正座をする。 朋樹と榊、ルカ、ジェイドは 扉の近くに並んで座らされている。 おじさんが、オレの背後に 一礼して 祝詞をあげ始めるが いつも、これは何を言っているんだろう と思う。 「... ドケツハケッツ フヨ アタ ドッド スサノハァ バケー ヴァ ハケツ イエツェール イトゥ ウガ... 」 おじさんの声を聞き、灯火の火を見つめているうちに、いつも気が遠くなるような感覚に陥る。 自分が空間に融け出すような感じで 外界との境が曖昧になっていく。 「... エーイエ アーシェル エーイエ... エーイエ アーシェル エーイエ... エーイエ アーシェル エーイエ...  ヤイェー... 」 血が逆流するような感覚と共に、いつも急に オレは オレに戻る。 「... ヒィツィ アカー オティー オール オッ フヒ コッエルヨン イエシュア アメカーヤ ナリァタ」 ... あれ? いつもより ちょっと長くないか? まあ、別に いいけど。 祝詞が済み、おじさんがオレの背後に 一礼すると、 これは終わりだ。
/224ページ

最初のコメントを投稿しよう!