第四話 野木崎 賢一

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 車はさほど走らずに、県庁付近で最上級のホテルの地下駐車場へ入っていった。エンジンが止まる。 「おまえ、男と寝たことある?」  唐突に野木崎が問う。匠は答えない。万が一にも兄に知られたくない。 「俺はあるよ。基は知らないだろうな、知ってたら俺におまえを預けるワケない」  野木崎はシートベルトを外す。 「疲れてんだ、誰でもいいから抱きたい」  貴重な休日によく知りもしない自分を連れ出す、それは本当に誰でも良かったと言うことか。  匠も、シートベルトを外す。  望まれるなら、したがっても構わない。  あらがうことを諦めたように見えるこの男に、当初の嫌悪感が薄れ始めていた。
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