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車はさほど走らずに、県庁付近で最上級のホテルの地下駐車場へ入っていった。エンジンが止まる。
「おまえ、男と寝たことある?」
唐突に野木崎が問う。匠は答えない。万が一にも兄に知られたくない。
「俺はあるよ。基は知らないだろうな、知ってたら俺におまえを預けるワケない」
野木崎はシートベルトを外す。
「疲れてんだ、誰でもいいから抱きたい」
貴重な休日によく知りもしない自分を連れ出す、それは本当に誰でも良かったと言うことか。
匠も、シートベルトを外す。
望まれるなら、したがっても構わない。
あらがうことを諦めたように見えるこの男に、当初の嫌悪感が薄れ始めていた。
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