1.序章

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 孫に命じられた部下が、狼星と呼ばれた老人を床に組み伏せた。 両手を真っ直ぐに伸ばして床に押しつける。  別の部下が合成皮のケースを開き、ポンプアクション式のショットガンを取り出した。  散弾が装填されるのを横目に、狼星は静かに言った。 「これがあなたに五十年仕えた報いですか、(コウ)兄貴」  スーツの男は膝を震わせながら赤ん坊のように立ち上がった。 そばに倒れている若い男に唾を吐く。 「お前の弟子が役目を継ぐ予定だったんだ。それを……それを、殺してしまいおって!」  初弾を装填されたショットガンが孫に渡された。 彼はそれを狼星の右手の甲に押し付けた。  冷たい銃口が触れてなお、老人の表情に変化はなかった。 こうなったのは当然のことだとばかりに。 だが孫がポケットから取り出したものを見せ付けられたとき、鉄面皮に絶望のひびが走った。 「紅麗(コウレイ)……」  そのつぶやきに孫は心から満足げな顔をした。 「お前らの国では、処女を味見すると寿命が延びるというな」
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