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孫に命じられた部下が、狼星と呼ばれた老人を床に組み伏せた。
両手を真っ直ぐに伸ばして床に押しつける。
別の部下が合成皮のケースを開き、ポンプアクション式のショットガンを取り出した。
散弾が装填されるのを横目に、狼星は静かに言った。
「これがあなたに五十年仕えた報いですか、洪兄貴」
スーツの男は膝を震わせながら赤ん坊のように立ち上がった。
そばに倒れている若い男に唾を吐く。
「お前の弟子が役目を継ぐ予定だったんだ。それを……それを、殺してしまいおって!」
初弾を装填されたショットガンが孫に渡された。
彼はそれを狼星の右手の甲に押し付けた。
冷たい銃口が触れてなお、老人の表情に変化はなかった。
こうなったのは当然のことだとばかりに。
だが孫がポケットから取り出したものを見せ付けられたとき、鉄面皮に絶望のひびが走った。
「紅麗……」
そのつぶやきに孫は心から満足げな顔をした。
「お前らの国では、処女を味見すると寿命が延びるというな」
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