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錬空はしばらくそれを見ていたが、上着ごと抱き上げ、遊具の土管の中に下ろしてやった。
シャツだけを着て自分の棟に戻る。
敷地内に十ほどの棟が並んでおり、C棟の101号室が自宅だ。
熱いシャワーを浴びてパーカーとジーンズに着替え、玉子の粥を二人前作った。
冷蔵庫の豆乳と漬け物を添えて食卓に置き、テレビをつけて待つ。
ニュース番組で、識者がボードを前にコメントしている。
「……えー、百狼会が暴力団としてここまで大きな力をつけた理由は様々ですが、十五年ほど前までは龍眼と呼ばれる中華街のですね、いわゆるチャイニーズマフィアが彼らの進出をさまたげていたと。それを吸収し傘下に置いてからは、百狼会が市場を独占する形になり……」
ニュースが七時になったことを告げた。
錬空は席を立ち、母親の部屋のドアを叩いた。
「母さーん? 七時だよ」
むにゃむにゃと返事がした。
食卓に戻って数分すると、柳が起きてきた。
ぼさぼさの髪の寝巻き姿のままで、眼をこすっている。
三十路を過ぎて三年、より豊満な体型になってはきたが、今でも美人であることには違いない。
やや目じりの吊り上った大粒の瞳と、常に柔らかく微笑んでいるような口元が錬空にそっくりだ。
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