2.羽関錬空

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 錬空はしばらくそれを見ていたが、上着ごと抱き上げ、遊具の土管の中に下ろしてやった。 シャツだけを着て自分の棟に戻る。  敷地内に十ほどの棟が並んでおり、C棟の101号室が自宅だ。 熱いシャワーを浴びてパーカーとジーンズに着替え、玉子の粥を二人前作った。 冷蔵庫の豆乳と漬け物を添えて食卓に置き、テレビをつけて待つ。  ニュース番組で、識者がボードを前にコメントしている。 「……えー、百狼会(ひゃくろうかい)が暴力団としてここまで大きな力をつけた理由は様々ですが、十五年ほど前までは龍眼(りゅうがん)と呼ばれる中華街のですね、いわゆるチャイニーズマフィアが彼らの進出をさまたげていたと。それを吸収し傘下に置いてからは、百狼会が市場を独占する形になり……」  ニュースが七時になったことを告げた。  錬空は席を立ち、母親の部屋のドアを叩いた。 「母さーん? 七時だよ」  むにゃむにゃと返事がした。  食卓に戻って数分すると、(りゅう)が起きてきた。 ぼさぼさの髪の寝巻き姿のままで、眼をこすっている。 三十路を過ぎて三年、より豊満な体型になってはきたが、今でも美人であることには違いない。 やや目じりの吊り上った大粒の瞳と、常に柔らかく微笑んでいるような口元が錬空にそっくりだ。
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