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「あいつらは組織の連中ダ。重大な任務が控えてるんダロウ。モメ事は避けた方がイイ」
血相を変えて
エマの行動を諌める通訳だった。
只でさえ白い顔が
更に白くなっている。
するとエマの顔が
今、発した通訳のある言葉に対し
見事な反応を見せた。
「組織だと?」
「『ヴァローナ』......民族開放同盟ヴァローナだ。かなり過激な思想を持った危険な集団ダ。ダカラ止めとけ。
奴等は、日系ロシア人を目の敵にシテイル。あんたは日本人ダ。絡まれるマエニ立ち去ろう。サァ、早く!」
通訳はそのように諭しながら、
エマの手を強く引っ張った。
しかし、
エマはその場所から
視線を外す事は無かった。
気付けば
通訳の手を打ち払い、
路地裏へと
再び足が自然に動き始めている。
!!!
「チョット待てって! 北行きの列車ハ、後30分で出発ダ。乗らないつもりナノカ?」
突発的なエマの行動に
通訳は焦りの表情を隠し切れない。
「あたしは生まれた時から、弱いものイジメが大嫌いなんだ。
それと今『ヴァローナ』って言ったな。だったら尚更引けん。
列車は大丈夫。直ぐにケリつけるよ。よし......仕事だ。しっかり働け!」
「チョット...... 仕事ッテ。俺は何をすりゃイインダ?」
通訳は目を白黒させている。
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