第二章 ворона (ヴァローナ/カラスの紋章)

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一方、 路地裏では...... 燦々たる状況が 続いていた。 「お前ら......よくも密告してくれたな! この『ヴァローナ』を売るとはいい度胸だ!」 怯える若夫婦を囲み 威嚇を続ける男達は全部で5人。 エマが言った通り、 それは弱いものイジメの 何物でも無かった。 ロシア人が皆そうなのかは 解らないが、 この連中どう言う訳か 皆、妙に身体が大きい。 囲まれただけでも かなりの威圧感だ。 周りを歩く者達が、 見て見ぬ振りをして通過してしくのも 何となく解る気がする。 好んで 揉め事に巻き込まれようとする者など 居る訳がない。 そんな逃げ腰の通行人の中には 制服警官も含まれていた。 情けなくなる気持ちと共に、 この『ヴァローナ』なる組織の 強力さを痛感した瞬間でもあった。 「みっ、密告したんじゃ無い......脅されたんだ。しっ、信じてくれ!」 貧相な服を纏った二人は まるで神に祈るようなポーズで 必死に身の潔白を主張する。 しかし、 そんな言い訳が通用するような相手であれば、 制服警官だって、 この明らかな犯罪行為を 見て見ぬ振りはしないであろう。 そんな若夫婦の主張など 焼け石に水である事は 言うまでも無かった。 「脅されて吐くのも、密告なんだよ! 垂れ込んだ奴を生かしといたとあっちゃ、『ヴァローナ』の看板に傷がつくってもんだ。 おい、その女の方は金になる。連れてけ! お前はここで終わりだ。覚悟はいいな?!」 男の襟首をたくし上げ、刃物をチラつかせるリーダー格の大男。
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