355人が本棚に入れています
本棚に追加
不要となった絵画......
主人に見捨てられた人形......
誰にも見て貰えなくなった写真......
そして、
地上に出る事を許されない
美しき1人の少女......
地下室には
そんな者達が、
埃を被って
投げ捨てられていた。
カシャ。
「えっ......誰?」
「しっ、静かに! 奴らがやって来た。......おいで」
足音を忍ばせ
息を切らせ
そんな地下室の階段を
おぼつかない足取りで
駆け降りてきた青年は、
施錠された
鉄格子の鍵を開けると、
そこに眠る
汚れない美しき少女に声を掛けた。
暑くも無いのに
額からは油汗が垂れ落ち、
唇を紫に変色させて
ワナワナと震えるその姿は、
今、二人に降り掛かろうとしている
残酷な運命を
象徴しているかのようだった。
ポタッ......
ポタッ......
額から溢れ出た汗が
青年の髪の毛を伝い、
手の甲へと
垂れ落ちていく。
「奴らって......」
震える声で
そう聞き返した少女の顔は、
青年の心に抱かれた恐怖が
まるで伝染したかのように
血の気を失っていた。
そんな慟哭の表情を浮かべ
薄汚い毛布から這い出た少女は、
まだあどけなさが
存分に残っている。
綺麗にウェーブが掛かったその金髪は
西洋人の典型とも言えた。
しかしその少女の顔には、
どことなく
和のテイストが加わっている。
純血なるロシアの民で無い事は
明らかだ。
最初のコメントを投稿しよう!