第二章 ворона (ヴァローナ/カラスの紋章)

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露となった右手の甲には 何やらタトゥーが。 目を凝らして覗いて見れば、 それは『カラス』の絵だった。 どうやら、 他の4人の右手にも 同じタトゥーが見え隠れしている。 きっとそれが、 組織のメンバーである事の 証なのであろう。 特に隠すような素振りはない。 むしろ、 見せびらかしている...... そんな印象すら受ける程だ。 「ど、どうか命だけは!」 身体を震わせ 必死に命乞いする男に対し、 『カラス』男は、 いよいよその刃物を振り上げた。 「あばよ!」 遂にカラスの右手は、 直角に降り下ろされた! 「ひえーっ!」 流し目で見詰める通行人も...... そんな悪行を楽しんでいる 5人のカラスも...... 連れ去られようとしている妻も...... そして、今正に 三途の川に足を踏み入れ始めた本人も...... そこに居合わせた誰もが 男の死を確信したその時だった。  ところが、 「えっ?」 突如、 カラス男の動きがフリーズする。 ............ ............ ............ 気付けば、 鋭利な刃物の先端は なぜか自身の首に 向けられているではないか。
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