356人が本棚に入れています
本棚に追加
/2788ページ
窓外に見える景色は、
真っ黒な闇に降り掛かる真っ白な雪のみ。
ガガガガガ......
吹き付ける雪の大軍が
車両の窓を揺らし続けている。
全く......
こんな煩い所でよく眠れるもんだ......
すぐ近くの座席で
口を開けて熟睡しているサラリーマンが
羨ましく思えて仕方がない。
乗車率は30%前後と言うとこだろうか。
決して混んでると言う印象は無いが、
かと言って、ガラガラと言う訳でも無い。
「ミハイル......『ヴァローナ』に深い恨みでも有るのか?」
乗車して1時間。
そろそろ頃合いよしと、
エマが唐突に切り出した。
この異国の地に降り立った今、
とにかく必要なものは情報だ。
危険を回避し、
且つ
マーラを救出する為には、
まだまだそれが不十分だった。
すると......
ウトウトし掛けていたミハイルは、
一瞬驚きの表情を浮かべるが、
直ぐに眠気を打ち払い
背筋を伸ばした。
「奴らの横暴振りは見ての通りダ。極東ロシアで恨みヲ持っていない人間などは居ナイ。俺が別に特別って訳じゃナイサ。
ソレヨリ......あんたハ日本じゃ凄いテロリストなんダロ。コレマデ何人も殺して来たって聞いたゾ」
ブハッ!
それを聞いたエマは、
口に含んでいたペットボトルの緑茶を
思いっきり吐き出した。
放物線を描いた緑茶は
すぐ近くで眠るサラリーマンの顔に直撃。
「ヤバッ!」
ところが、
寝返り打っただけで
目を覚ます事は無かった。
冷や汗ものだ。
最初のコメントを投稿しよう!