第十八章 Nikolaevsk‐na‐Amure(ニコラエフスクの夜)

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「エマさん......列車が動き出すみたいダケド......」 短くなったマルボロを 灰皿に押し付けながら 静かに語り掛けるアレク。 「そうか......」 ある程度は予期していたのだろう。 そんなアレクの情報開示に対し エマの表情は特に変わらない。 「これからどうするンダ? いつまでもこの街に居るつもりも無いんダロ」 「......」 「北行きの列車に乗るツモリカ?」 「なんだ? 嫌なのか?」 「イヤ......べつに嫌じゃ無いケド......マーラが列車に乗るって言う確証でもあるノカ?」 「やっぱ嫌なんじゃねーか」 「ダカラそう言う訳じゃ無いッテ!」 『ネクラソフカ村』から はるばる舟でサハリン湾を渡り、 漸く大陸の『ニコラエフスク・ナ・アムーレ』の街に辿り着いたエマとアレク。 しかし、 逸る気持ちとは裏腹に、 到着するや否や 突然の悪天候に見舞われ 足止めされること二日間。 ソフィアとヴィクトルが行きそうな所を しらみ潰しに探し続けるも、 未だその姿を見付けるには 至っていない。 モダンなバーカウンターに ちょこんと座り、 モチベーション低下を 抑え切れない二人だった。
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