第一章 D・I・D(ディ・アイ・ディ/二人の少女)

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「大丈夫だから......落ち着いて。まずは心を静めよう......ほら、深呼吸」 ふぅ...... ふぅ...... 怯える少女を 必死に力付ける青年。 泣き顔を 無理矢理笑顔に変えてしまう 心意義だけは立派だ。 しかし...... そんな強い気持ちとは裏腹に、 扉の向こう側の状況は 悪化を辿るばかり。 30畳は優に超える1階のリビングは、 最早、完全なる修羅場と化していた。 「マーラって誰なのよ! そんな子ここには居ないわ。あんた達、なんか勘違いしてるんじゃない?!」 シックなナイトウェアを纏った 高貴漂う中年女性は、 気狂いピエロの如く 涙混じりの声を上げた。 多分...... 顔のつくりからして 青年の母なのだろう。 正に半狂乱。 落ち武者の如く髪は乱れ 涙と鼻水で 顔はグシャグシャになっていた。 この母も、 幼き二人同様、 この招かれざる侵入者達の残虐さを 十分過ぎる程に理解しているようだ。 「早く出ていけ! けっ、警察を呼ぶぞ!」 立て続けに今度は、 母と共にソファーに座らされた 父が怒鳴る。 焦げ茶色のガウンを纏った その父もまた、 高貴なオーラが 内面から滲み出ている。
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