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流れ落ちる汗を手のひらで拭ってやると、あの頃と同じ八重歯を見せニカッと笑う洸がいる。ここに洸が。あんなに会いたくて恋しかった洸と繋がる僕の身体。
僕達…一つになれたんだ…
込み上げる愛しい想いと腹の中で熱く大きな塊がドクドクと脈を打つその感覚が僕を満たし、さっきまでのモヤモヤはどこかに飛んでいった。
子供の頃には見たこともなかった荒々しい雄の顔を見せる洸の首に腕を回し、僕は僕自身でさえ聞いたことのない喘ぎを声にした。
身体はどんどん追い詰められて欲に覆われていく感じに戸惑いは見え隠れする。
だけどその戸惑いも不安も洸と一緒なら怖くない。
例え知らない過去があったとしてもこれからの洸が僕のものになるなら。責めても返ってこない過去はこれ以上聞かないほうがいい。
頭の隅に追いやるように追い上げてくる辛さが甘い痺れのように変わった快感に酔いしれ、洸に追い込まれていった。
「翔?大丈夫か?」
いつの間に眠ってしまっていたのか、ひんやり冷たいものが頬に触れる。
開いた目の前には心配そうに覗きこむ洸がペットボトルを持って頬に当てていた。
そう、目の前に洸がいる。腕を伸ばして触れればそれは本物で夢なんかじゃない。何度も会いたくて夢見た洸を抱きしめる。そんな僕をみて洸は肩先で笑った。
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