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それは洸が誰かを抱いた嫉妬なんだろうか。過去を責めてはいないけど、嫉妬はする。
僕は洸だけを思って生きてきたのにって少しは、いや結構…思ってる。
何故僕だけを思って生きてくれなかったのか、罪悪感で出来なかったわけじゃないだろ、ちゃんと気持ちよかったんじゃないの?その気持ちは終わってからの罪悪感だろ。なんて、僕の我儘な心は結構な勢いで洸を責めている。これが本心…
「いたかもしれないけど…忘れた」
恋だって身体を繋いだのだって洸しかいない。一途といえば聞こえはいいけど…ただの臆病者なんだよ、僕は。
ゆっくりと身体を起こし洸の隣に腰を下ろした。まだ何かが挟まっているような違和感が腰を浮かす。それを感じ取ったのか、僕を抱え上げ膝に座らせてくれた。
「辛い?ごめん、セーブできなくて」
胸元にキスを落しながら抱きしめる。そのおぼつかない感じで実は洸は慣れてないことに気付き少し安堵した。
「そのまま忘れててよ、そんなやつ思い出さなくていい。俺だけでいいじゃん」
いや、いないけどな。そんな僕の見栄にも反応してくれる洸はやっぱり真っ直ぐで可愛い奴のままなんだと笑ってしまった。
過去に囚われたくないのは僕も同じなんだ。嫉妬したって洸が苦しんで後悔させてしまうならそのまま思い出の一部になってくれた方がいい。
「洸も思い出さないで、僕だけでいいじゃん」
真似て言えば目を見開いて僕を凝視する。
「もう思い出せないくらい翔の虜なんだけど。比じゃないくらい翔がいいよ」
思い出してんじゃないよ、そう思いながらもその言葉を待っていたかのように、僕から洸にキスをする。それはまた深いものになっていく気配に胸が高鳴った。
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