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残業を早めに切り上げたのに足取りは重く、それでも洸に会いたくてマンションに向かう。
約束も思い出せない僕を、愛おしそうに見つめる洸に罪悪感はある。だけど顔を見れば胸は鳴り、洸に恋しているんだと自覚する。
マンションのインターフォンを鳴らせばドアは開き、突き当たりの部屋に向かう。
「おかえり」
そい言って出迎えてくれる洸を見れば自然に笑顔になり、さっきまでの重い気持ちは軽くなった。
「今日さ、どうしても唐揚げ食いたくって作ったんだ」
招き入れ鞄と上着を剥ぎ取って、ネクタイに手をかけた。
「いいよ、自分で外すから」
「いいじゃん、やらせて。翔はなんもしなくていい」
するすると外してニコッと笑う。その手はベルトに伸びて慌てて腰を引いた。
「どうした?下も脱がないとシワになるから…」
「やる!自分でやるから!」
この間の情事を思い出して熱くなる。そう、あの日以来、そういう意味で洸が忘れられなくて熱くなる身体を馬鹿みたいに毎日慰めていた。
こうやって近くにいるだけで身体が火照ってしまう。僕の身体はどこかおかしくなってしまったんだ。
「顔真っ赤。可愛いなぁ、翔」
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